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いいかげん版 ギターは、簡単じゃない。
     50歳からのブルーグラス教室
   =4つのコードと2つのマイナー・コードを覚えてバンドをつくろう=

※この教室は、繊細な神経の持ち主やうんと上手くなろうとしている方
 にはお勧めできません。

ギターは難しい楽器

ステップ 1(コードって何?)

ステップ 2(楽譜について/ Roving Gamblerと「#」記号)

ステップ 3(Gのコード)

ステップ 4(Dのコード)

(コーヒー・ブレーク @(他の楽器の楽しみ方)

リズムについて(ブルーグラスは、ブン・チャ)

ステップ 5(Gの曲とコードダイヤグラム、セブンス)

ステップ 6(All the goodtime are past and gone をやってみよう)

ステップ 7(カポタストとついでにもう1つのコード)

コーヒーブレーク A(ひとりごと)

ステップ 8 (マイナー・コードって何?)

ステップ 9 (マイナー・コードをつくってみよう)

ステップ 10(EmとAmで Fair and Tender Ladies と Down in the Willow Garden)

ステップ 11(もう一度カポタスト/おさらい)



ギターは難しい
 音楽を始めると絶対音階と相対音階という言葉に出会います。
最近話題になっている「絶対音感」とは違います。音符の読み方の問題です。
私は小学生の時にこれ理解しないままその後の音楽の成績に影響を及ぼしてしまった。
そして、なんと高校へ行ってまで音楽を選択、そこでまた混乱して理解しないまま終わっ
てしまった。
 さて、音階(名)ですが、日本には、ドレミファソラシド、ハニホヘトイロハ、
CDEFGABC(これには英語読みとドイツ語読みがある)こんな4種類も使い分け
たり、混同させている国はない、と思う。
 私は小学校以来、相対音階で音楽教育を受けていたため、ハ長調の楽譜の読み方で、
譜面の「ド」の位置にある音符はドというのは当然だが、ニ長調になると、同じ場所に
ある音符が「シ」と読むということになってしまう。この頭の切り替えができなかった。
わかっていたら違った人生を歩んだかもしれない……、それはないか。
 絶対音階では、ハ調の「ド」の位置にある音符は、たとえ、ヘ調の楽譜になっても「ド」
と読みます。
最近の学校では、絶対音階を使っているようです。これなら混乱しない。
 はっきり言って、私はギターは得意ではない。というより、20年やっているが少しも上
手くならない。上手くならなくてもバンドはできる。音楽を楽しむことが出来る。
ということが言いたいためにこの教室を開くことにした。

 作曲家の神津善之氏が「誰でも手をつけるが結局難しくて放り出してしまう楽器の代表が
ギターで、なぜ難しいと言うと、人間の左指は5本しかないのに、ギターの弦は6本ある。
これは当然のことながら、非常に巧妙に嘘をつくか、指に妥協した和音を弾いているかだ
……」。確かにそうだ。
 まあ、嘘をつくとか、妥協した和音なんて難しいことをぬきにしても指が4本しか使えな
いのは致命的だ。だったら、巧妙に嘘をついて、指に妥協して、一生懸命にならないでやって
みよう、というのもこの教室の主旨だ。
 実際にギターを持ってやってみると、左の掌と親指でネックを支えると残りの指は4本。
弦が2本余ってしまう。
例えば、Fというコードは、よく出てくるが、指にとってこんな不都合なことはない。

  (Fコード)

人指指で2本を受け持って、親指はネックを支えながら、E弦を押さえ
る、というより、鳴らないようにミュートさせる役目をしている。
これが妥協した和音といわれる所以だろう。
試しにやって見ると分かるが、これは難しい……。
B♭なんていうと、図でみると簡単そうだが、実際には、
難解な押さえ方をしなければならない。



(B♭コード)

指の柔らかい若いうちか、毎日練習をすれば不可能なことではないが、
ちょっとギターでもやってみよう……、
という人には、とても耐えられるような簡単な練習ではないし、
そんなに根気がある人がたくさんいないことは、ギターを持っていても弾けない人が
大勢いることを証明している。





最近のリサイクル・フリーマーケットなどではギターは必ず出てくる。
ギターは、一見、簡単そうで、教則本などもたくさん出ていて、
「一週間独習法」とか、「コードで覚えるフォークギター独習法」
なんていうのがあって、ビデオまで付いていたりしている。
これは何とかなるんではないかと思って適当なギターと適当な教則本を選んで
買ってしまう。これが間違いの始まりで……。一週間も続かないで放り出してしまう。
理由は、先に述べたように、ギターは、六本の弦があって、ネックを持つのに親指が必要。
自由に動く指が4本しかないし、4本のうち小指は力が入らないので3本しかないという
ことに気がつく。これは非常に不合理だ

このギター教室の基本
@チューニングを変えない。
Aコードは、指を最高3本以下。

 (三本指で押さえられるコードはたくさんあるが、経験的にGのキーで始めるのが一番簡単だ。)
B覚えるコードは6つ以下。(セブンス・コードは除く)
 という簡単な条件で誰でもできるブルーグラス・スタイルのバンドを始めてみよう。

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  ステップ1
コードって何?
高さの違う2つ以上(通常は3つ)の音が同時に鳴り響く音の集まりをコードといいます。
(3和音ともいいます。)
簡単にいうと、曲は、リズム、メロディ、ハーモニー、つまりにコードによって
構成されています。
理屈はともかく、具体的にコードの中身、つまり構成音はどうなっているかというと、
これはすべて2つ以上の音(各キーの相対音階でド、ミ、ソにあたる音)で構成されています。
各キーの「3つの和音(コード)」を下の表に示します。


 

キー

基本音

4度音

5度音

C/ハ調

  C



D/ニ調

 D

 G


E/ホ調

  E



F/ヘ調

  F

Bb


G/ト調

  G



A/イ調

  A



B/ロ調
 

  B
 


 


 






 

  ※ブルーグラスバンドなどでやるアメリカの曲の大部分は「3コード」です。
 つまり、1曲の中にコードが3つしかないのです。
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  ステップ2
トラディショナルの曲で、カントリージェントルメン、スタンレーブラザース他、いろんな
人がやっている『Roving Gambler』という曲から始めてみよう。
これの曲は、コードが「G」と「D」の2つで12節。
コードが2つじゃおもしろくないし、単純すぎておもしろくない、なんて言わないで……。

  楽譜の基本




  曲を始める前に、楽譜について説明しよう。
楽譜は読めなくてもいいが、知っていると便利だと思う程度にしておいてもいい。
メロディは楽譜で覚えないでLPやCDなどの音を耳で聴いて覚えよう。
(面倒な方はこの項を飛ばして「ステップ3」の項へ行ってください)
 上の楽譜は『Roving Gambler』の最初の部分だが、楽譜そのものは小学校以来
おなじみのものだと思う。
五本の線があって、通称、ト音記号(正式には高音部記号)という渦巻き状の記号があります。
ト音とは、五線上の音符、ハ(C/ド)ニ(D/レ)ホ(E/ミ)ヘ(F/ファ)ト(G/ソ)
イ(A/ラ)ロ(B/シ)ハ(C/ド)のト音のことで、つまり、ト(G/ソ)の音のある線、
下から二番目のG音の所から渦巻き状の記号が始まっていることからそう呼ばれています。
これはどのキーの楽譜でも同です。
ドは、ハで、Cだと……。どうもこの辺からおかしくなるようだ。
日本の音楽教育の欠陥を指摘しても始まらないが、せっかくギターを始めるんだから
そうもいかないでしょうが、「ハ」も「ド」も忘れてしまってください。
基本音は、英語読みで『C/si:』と覚えてしまおう。

  楽譜にもどると、ト音記号の右、5線の一番上に「#」の記号が一つ付いていることに注意
してください。
音楽嫌いになった理由の一つに「#」が付いて以来、音符が読めなくなった……と
いう人がたくさんいる。よく考えればそんなに難しいことじゃないのだが……。
これも相対音階教育の弊害か。

  「#」の記号は、半音あげるという意味です。
次に、「#」の付いている位置を見ると、一番上の線の上にあります。
この場所が「F(ファ)」の位置だから、この曲にある、Fの音は、全部半音上げる
という意味です。音符を見て、この記号の付いている場所の音をすべて半音上げます。
そして、#が一つ付いていれば、キーは『G』(Em キーの場合があるが、とりあえず
覚えなくていい)。
これは約束事だから理屈抜きで覚えてください。
ギターのF音のフレットを1つ上げると、つまり、自分の身体の方に指を移動させると
半音上がります。
「#」が2つ付いていても、3つでも同じことです。記号の付いている所の音をそれぞれ
半音上げてやればいい。
「♭」の場合は、その反対で、半音下げるという意味です。
だいたいブルーグラス系、トラディショナル系の曲は、キーG(#1個)、キーA(#3個)、
D(#2個)の3つのキーとそれに対応する3つのコードを覚えるだけで1000曲以上が
演奏できます。


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  ステップ3
では、ギターの「キーG」コードの作り方から始めます。
Gの和音は、G、B、Dです。コード(和音)についてはステップ1にありますが、
理屈は後回しにして、形から始めてみよう。

ギター(Gコード)

指1本でG調コードはできます。いわばウクレレ・スタイルのG調コードです。
押さえる弦は1本で、これで充分とはいえないが、とりあえずこれでOK。
ジミー・マーチンだってこれと同じにやっているように見える。音もそう聞こえる
まず、1番線、3フレット(G)を薬指で押さえる。
そして、4番線以下の4本をピックで一番線に向かって一気に弾き下ろす。
5番、6番線には触らない。
これは四分四拍子の曲だから、四番線の開放弦D音を1回、開放のG、B、G、3本を
一気にジャランと1回。
これを1セットとして、1小節に2回繰り返す(1小節2セット)。
十二小節だから、ピックは24セット繰り返す。計48回ピックで弦を弾くことになる。
これで1フレーズが完成する。あとは何回でも繰り返せばいい。
しかし、この場合、主音がDになるが、Gの和音に含まれる音なので、そんなの気にしない。
気になる人は、教則本に出ているようなGコード、1番線3フレット目(G)を薬指、
5番線の2フレット目(C)、6番線3フレット目(G)というGコード・パターン
でやると和音にひろがりがでるが、最初から無理しなくてもいいでしょう。

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  ステップ4
                                   

次は、Dのコードを覚えよう。
まず、1番線、2フレット目を薬指、二番線は、3フレット目を小指、3番線
の2フレット目を人差し指でそれぞれ押さえ、6番線にはピックをさわらない
ようにして下に弾き下ろす。
これでDコードの和音がでる。
これでGとDの2つのコードを覚えたわけです。




もう一度言いますが、メロディは、楽譜で覚えない方がいいと思います。
「なぎら健壱」さんもこの曲を日本語で歌っています。
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  (コーヒー・ブレーク)
ここで他の楽器についても触れておこう。
真面目に楽器をやっている方、気にしないでください。

ベース
これは右手の指の皮を鍛えて、硬くしてしまうか、綿製の軍手のような手袋をして
やれば指を保護できる。練習で指が腫れて、その後血が吹き出て……という
悲惨な経験を持つ人を何人も知っている。
フレットがない分簡単。音を探すのが大変だが、カラー・テープで目印をつけるといい。
さて、演奏だが、左手はネックを支えるだけで弦は押さえない。
オープン弦で充分で、Gコードは、一番線と二番線を交互に、G音とD音(2つで1小節)
Dコードは2番線と3番線(DとA)と順番にやるだけでいい。
Dコードの音がオクターブ低いが気にしない。
エレキベースを使う場合にも応用できる
トム・グレイ、ロイ・ハスキーJrがどうのと言わなければ問題ない。

※1960年代後半頃のヴァイオリン型エレキベース(国産)を持っています。

  バンジョー

とりあえず、あの重さに耐えられる体力があればいい。
左手でネックを支え(弦を押さえない)サムピックで、ジャランとやればGコードが鳴る。
弦が比較的柔らかいので押さえるのは楽だ。
スクラッグスがどうの、ビル・キースがどうの、なんていわなければ何とかなるもの。

※←「メイド・イン・イイダ」オープンバック(アルミ枠)のバンジョーを持っています。








  フィドル
これは最も難解な楽器だと思われているが、比較的簡単で、単に耐えるだけでいい。
左耳から聞こえるこの世のものとは思えない音にひたすら耐えれば、そのうち自分自
身も他人も馴れる。
マンドリンと弦のチューニングが全く同じなので、カラー・テープを細く切って
音を探しながら指盤に張り付けて疑似フレットにして音の住所録を作ってしまおう。
音の善し悪しはともかく、音の位置がわかる。それで何とかメロディーを弾ける。
私の場合、ウクレレをフィドルチューニングにして音の位置感覚を覚えた。
もし、コードを弾くという欲が出ても、弓では1度に2本以上の弦は弾けないように
なっている構造なので、指2本でGコードの音が出せる。
もっと欲を出してオレンジ・ブロッサム・スペシャルなどを弾こうと思わなければそれ
で充分。

  フラット・マンドリン
歌謡曲をやるつもりだったら弦の柔らかいラウンド・マンドリンだから何の心配もいらな
いが、ブルーグラス・スタイルの音楽をやる場合、弦は堅いし、メロディもさることなが
らコードを押さえるというやっかいなことがある。コードを押さえるには弦の並びが何と
なく不自由になるがそのぶん、弦は4本しかないから少しは救いだ。左手の指の柔軟
運動をしっかりやって、押さえる力をつければいい……、
弦は複弦で、ユニゾンの弦(つまり、同じ高さの音)が2本づつで8本あるが、使える指
の数と同じでだからビル・モンローやサム・ブッシュさえ目指さなければ、あまり問題は
ない。
それにGコードだけだったらフィドルと同じで2本指だけで、1番線の3フレット(G)
と2番線の5フレット(D)でいい。音に厚みがなくなるが初めてだったらこれで充分。

  ドブロ
これも重い、やはり体力とハードケースの取っ手のバランスを直す工作力が必要になる。
これはメーカーがケースづくりに手を抜いているとしか思えない。
オープンコードがGだから、メロディを弾かなければ、バーで弦を押さえなくてもいいが、
それじゃせっかくのドブロが泣く。ちょっと気の利いたことをしたかったら、バーを13
フレットの所へ持っていくと、オクターブ高いGコードが弾ける。この方がドブロらしい
音がする。
メロディは、音階の住所を覚えることだが、幸いにも、他の楽器と違ってフレットを真上
から見ることができるから、少しみっともないが、フレットに音の住所を貼ってもいいし、
順番に、番号なんか貼ってもいい。
それで出したい音の半音くらい下げた所から左手のバーを右に移動しながら右手のピッ
クで適当に弾くとそれらしい音が出る。無責任……かな……
これもジョッシュ・グラビスがどうのこうの言わなければ何の問題もない。

  さて『Roving Gambler』を各パートごとに練習してみよう。



リズムについて
ブルーグラス系のリズムは『ブン・チャッ、ブン・チャッ』という歯切れのいいものです。
間違えやすいのは、アイリッシュなどケルト系のリズム、例えばリールの場合、『ブン・チャカ、ブン・チャカ』という感じになります。
エミルー・ハリスがそんなギターを弾いてましたね。
リズムの感覚は人によって大きく異なる場合があり、早めにリズムを出す人(前ノリ)と遅めに出す人(後ノリ)がいます。
前ノリの人は、気がつくと曲がどんどん早くなってしまっていたりします。
これは全体を盛り上げる効果もありますので、意識的に応用するのなら良いのですが、自分でも演奏できないくらいに早くしてしまう「破滅型」の方もいらっしゃるようです。
逆に、後ノリの人は落ち着いて聞こえますが、油断すると曲がどんどん遅くなってしまい、楽しさや躍動感に欠ける演奏になってしまったりします。
いずれの場合も普段から録音して、自身で客観的にチェックしておく必要があります。
 困ったのが、バンド内で前ノリと後ノリの人が同居してえいるケースです。
お互いに気をつけて補正し合い、バランスを取るということも可能かもしれませんが、場合によってはメンバー・チェンジが必要となるでしょう。
例外もありますが、クラシック系の音楽教育を受けた人達の多くは、身体でリズムを取るということができず、アタマの中だけでメロディに抑揚をつけて、リズムを無視してしまうという傾向があるようです。
できればそのような概念は捨てて、全体のリズムのウネリの中に身をゆだねて、リズムにのった状態でメロディを打ち出していく必要があります。 とにかくリズムのチェックに関しては「客観性」が大切です。
自分では合っているつもりなのに、ハズれているのが『リズム』なのです。

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To Fiddle と Banjoオールドタイミー&ブルーグラスの主役

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